猛暑の夏!
小田原に到来した〈アイスクリーム(ジェラート)ムーブメント〉!

猛暑の夏真っ盛り!
この毎日に、以前より〝アイスクリーム〟や〝ジェラート〟を食べるようになった、という方も多いのではないでしょうか。
実は、小田原や周辺のエリアには、地域の生産物を使った、美味しいアイスクリームやジェラート等が食べられるお店、購入できる場所がたくさんあります。
そんな、「地産地消」のひとことでは片付けることができないような、このエリアならではの〈アイスクリーム(ジェラート)ムーブメント〉について、今回は紹介したいと思います。

生産者自らがつくる自慢のデザートがひらく可能性!

一般的に〝アイスクリーム〟は乳成分量ごとに3〜4種類に分類されているのですが、〝ジェラート〟は、その中でも特に乳成分が少ない分類に入る、イタリア発祥のデザートです。
また、アイスクリームより多くの空気を含んでいるのが、おなじみの〝ソフトクリーム〟。
冷やして固めるアイスクリーム、固めないでその場でつくるソフトクリーム…など、似ているようで異なる夏のスイーツ群ですが、そのベースとなっているのは、やはり「乳成分」。
小田原牧場アイス工房。
そこにこだわりを持ち、1999年に地域の酪農家の方たちが集まって始めたのが、曽我の「小田原牧場アイス工房」。
自分たちが育てた牛の乳を使ったジェラートは、家庭のデザートとして、ドライブや休憩(数名ほどの飲食スペースあり)の供として、イベントに出店するキッチンカーとして、地域の人たちにも親しまれ、牛のイラストの描かれたロゴマークは広く認知されています。
梅農家さんが作成した梅酒と、農協のプラムを使用したジェラートのダブル(小田原牧場アイス工房)。
『箱根ジェラート』清見オレンジ味(モダン湯治おんりーゆー)
味の種類でいうと、自身の果樹園で育てたフルーツを使ったジェラートの企画・販売を行なっているのが、沼代の「あきさわ園」。
2015年に箱根で火山活動が活発になった際、応援したいという気持ちを込めて、『箱根ジェラート』の名前で販売したのが始まりでした。
自慢の果実を60%以上使った5種類のジェラートは、箱根や湯河原のいくつかの宿泊施設、南足柄の温泉施設、同園の直売所等で購入することができます。

こういった、生産者自らが生産物を使った商品を開発・販売していく流れは、「六次産業」とも呼ばれて、全国各地で取り組まれていますが、生産物の有効活用、新たな経済の回転、ひいては雇用の向上…と、その可能性は計り知れません。
もちろん買う側にとっても、地域でつくられているものを気軽に味わうことができるのは、嬉しい限り。

エリアのキーワードは「農商工連携」!

そんな、このエリアの〈アイスクリーム(ジェラート)ムーブメント〉のキーワードとも言えるのが、いわゆる「農商工連携」。
農家・畜産農家・漁師等と商工業者が連携、お互いの強みを活かして相乗効果を発揮していこう、というアクションです。

例えば、大井町では、地域の2つの酒蔵の代表的な銘柄である、『曽我の誉』(「石井醸造」)・『箱根山』(「井上酒造」)の酒粕を使用したアイスクリームを、同町の「アイス工房まつが」の手によって商品化、道の駅などで販売しています。
〝名酒の飲み比べ〟ならぬ〝食べ比べ〟ができるのが、最大のポイントであり、面白さ。
「大井町=酒蔵のまち」という特徴への着目も誘う、ユニークな取り組みです。

『曽我の誉』の酒粕を使用したアイスクリーム(道の駅足柄・金太郎のふるさと)

「アイス工房まつが」のアイスクリーム(道の駅足柄・金太郎のふるさと)

〝薫る野牧場のソフトクリーム〟使用のメニュー(やまきたさくらカフェ)
また、独自の放牧スタイルで全国の注目を集めている、山北町の「薫る野牧場」では、育てた牛の生乳によるソフトクリームミックスも製造、販売。
そのミックスを、地元のカフェや都内の飲食店などが仕入れることで、それぞれのお店のマシンでソフトクリームをつくり、メニューとして〝薫る野牧場のソフトクリーム〟を提供することもできる、というスタイル。
こういったかたちも、また、新しい「農商工連携」と言えるかもしれません。
そして、小田原では、「小田原柑橘倶楽部」という〝地元の農家と商工業者をつなげて地域活性化を推進していく〟ことを掲げて活動している団体が、地元の柑橘類を使った加工品を企画・販売。
商品の中には、片浦レモンを使ったジェラートなどもあり、お土産にはもちろん、報徳二宮神社神社境内にある「cafe小田原柑橘倶楽部」で〝小田原ならではのスイーツ〟としても味わえるなど、人気を集めています。
報徳二宮神社境内にある「cafe小田原柑橘倶楽部」

片浦レモン味のジェラート(cafe小田原柑橘倶楽部)。

観光地「小田原」も放っておかない!
ジェラートを食べることが〝小田原を感じる〟アクティビティに!?

そんな〈アイスクリーム(ジェラート)ムーブメント〉を、観光地・小田原が放っておくわけはありません。

小田原城のお堀沿い、南入口の近くにある「三の丸売店」では、ソフトクリームの味のラインナップに、売店でも扱っている梅酒(『曽我梅林の梅酒』/石井醸造)を使用した〝梅酒〟味を用意、観光客から好評を得ています。
ちょうど7・8月は、近くに群生するハスの花が見頃となる時期。
ハスや藤棚のあたりを眺めながら、また、空調の効いた店内でひと休みしながら、名産の味を楽しむのも、小田原歩きの一興かもしれません。

『曽我梅林の梅酒』味のソフトクリーム(三の丸売店)。

一方、正面入口側の「小田原市観光交流センター」併設の「CAFE SANNOMARU」では、前出の「小田原柑橘倶楽部」や、「はなまるキッチン」「LABORATRIO」などの、小田原でジェラートを製造・販売しているお店から、計8種類のジェラートをセレクトして提供。
お店にこだわらずに自由に好きな味をチョイスすることができ、また、それらを組み合わせることも可能。
まさに、ジェラートを食べること自体が〝小田原を感じる〟アクティビティとなる、ムーブメントを体感できるような試みとなっています。

「はなまるキッチン」と「LABORATRIO」のジェラートをダブルで(CAFE SANNOMARU)。

「小田原柑橘倶楽部」「はなまるキッチン」「LABORATRIO」のジェラートから好きなものを選べる(CAFE SANNOMARU)。

ジェラートをめぐる、これからの可能性。

とはいっても、可能であれば、そのジェラートをつくっているお店に行って食べてみたい、というのも正直なところ。

野菜を中心とした独特のラインナップ(はなまるキッチン)。

「はなまるキッチン」は、小田原駅から徒歩10分ほどの住宅街にある飲食店。自身の農園でつくっている旬の野菜を使用した料理が人気の、農家レストランです。
テイクアウトやキッチンカーでも提供しているジェラートには、農園らしく、トマト、焼きナス、落花生…など、他のお店ではあまり聞かないような素材を使った、珍しい味のものも多く提供しています。

2021年オープンのジェラテリア「LABORATRIO」。

「LABORATRIO」は、小田原駅西口を降りてすぐ、城山郵便局の前に2021年にオープンした〝ジェラテリア(ジェラート専門店)〟。本場・イタリアで研鑽を積んだシェフによる本格的なジェラートを、イートイン、テイクアウト、オンライン販売で味わうことができます。
こだわりの食材の中には、時期によっては地元でつくられた果実などもあり、そのコラボレーションを楽しみにするファンも多いお店です。
これらのムーブメントのベースには、こういった、まちなかのお店が「地域で生産されたものを地域で消費しよう」と、ごく自然に取り組んでいる姿勢があるのではないでしょうか。
それが、買う側・食べる側にとっても、〝地域を味わう〟ような感覚になって、住んでいる人にとっては愛着がわき、観光客や訪れた人にとっては、その真摯な姿勢や味そのものが〝小田原の記憶〟として残っていく。
シンプルかつ持続的な関係性ができあがりつつあるのかもしれません。

足柄茶と、地域の自家焙煎珈琲店の豆を使ったコーヒー味のダブル(龍宮堂)。

そんな中、老舗の蒲鉾店や干物店などが並ぶ観光スポットでもある〝かまぼこ通り〟に、2021年にオープンしたのが「龍宮堂」。
ここも〝地域の生産物などを使ったジェラート専門店〟ではありますが、今までにないのは、〝観光の拠点〟であるという点も意識していること。
ジェラートに、生産物の加工品としての可能性、業種連携の成果としての可能性、まちの特徴を伝える素材としての可能性以上に、まちをめぐる人の足をとめ、交流し、再びまちへと送り出すような、「〝場〟の象徴としての可能性」も見出しているのかもしれません。

〝観光の拠点〟でもある「龍宮堂」。住民も観光客も訪れる。

暑い暑い夏、小田原やこのエリアならではの、今が旬の〈アイスクリーム(ジェラート)ムーブメント〉を、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

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