【イベントレポート】
小田原・御幸の浜で、
神奈川県西エリア初の
〝バリアフリービーチ〟開催!

2022年8月、小田原の海水浴場(御幸の浜)で、神奈川県西エリア初!の〝バリアフリービーチ〟が開催されました。
それは、車椅子ユーザー、ベビーカーを押すママさん、足腰の弱い年配の方…〝どんな人でも、誰でも楽しめるビーチ〟へのチャレンジ!
ユーザーのみなさんや、多くの関わりのある方々にとっての、念願の企画でもありました。
と同時に、当事者や関係者でない人にとっても、これからの〝目指すべき方向〟への試み、心が明るくなる企画として、大きな共感を持って受け入れられたのです。
夏の明るい太陽の下、みんなの笑顔があふれたそのイベントの様子を、今回はレポート形式でお伝えしたいと思います!

「小田原で〝バリアフリービーチ〟をしたい」
何気なく発した言葉が、現実のものに!

開催のきっかけは、地域でバリアフリーの活動をしてきた作業療法士・初鹿真樹さんが、市民活動で交流のあった、海の家の運営者でもある福田ひろみさんに「小田原で〝バリアフリービーチ〟をしたい」という話をしたこと。
福田さんが協力を申し出てくれたことで、いっきに話は実現に向かって加速していきました。
初鹿さんが代表を務める「Teamリハもんfrom県西リハ」のメンバーや、小田原近隣エリアの車椅子ユーザーのみなさんも加わり、「ODAWARAバリアフリービーチ実行委員会」は結成されたのです。

ミーティングは、グループチャットやWEB会議ツールなどを活用して進行。
前提として、今回は初回ということで、〝試験的な取り組み〟として開催することに。
参加する当事者は実行委員会の4人+ボランティアスタッフを募集する、という形になりました。(今回の経験を元に、今後は当事者への参加も募集する予定)
そのボランティアも、物を組み立てたり運んだりのお手伝いや、遊んだり、体験したり、見学したり…といった、「見て知って関わって、一緒に楽しもう!」といったニュアンスのもの。
また、ミーティングで課題としてあがっていた、〝車椅子で砂浜を走る方法〟や〝車椅子用トイレの確保〟については、特殊なマット「モビマット」を海まで敷けることになったり、「移動式バイオトイレカー」が来てくれることになったり…と、続々と強力なサポートを得ることで、解決の目処が立っていきました。
徐々に、「ODAWARAバリアフリービーチ」が、現実のものとして姿を現してきたのです。

続々と集結する、メンバー、ボランティア、
そして〝アイテム〟たち!

いよいよ開催当日!朝から見事な晴天です。
とはいえ暑すぎることもなく、まさに海水浴日和。
会場の御幸の浜には、続々と、メンバーやボランティアのみなさんが集まってきました。

そして、今回の開催には欠かせない〝アイテム〟たちも登場!
まずは、それら〝アイテム〟を紹介していこうと思います。

モビマット

〝車椅子で砂浜を走る〟ことを可能とする特殊なマット!
モビリティ+マットの略で、リサイクルペットボトルが原料、メッシュ状で砂がたまりにくく、海で使用しても劣化しにくいという、まさに〝海〟向きの特殊なマットです。
車椅子やベビーカーのタイヤが砂に埋もれないのはもちろん、お年寄りや障がいのある人も歩きやすいという、ありがたい存在。
共催である「湘南バリアフリーツアーセンター」のサポートで、使用が可能になりました。
これを、車椅子の導線にあわせて、海水浴場の入り口から浜辺へ、海へと敷いていきます。
当日は、みんなに「モビマット」を体感してほしい!と『モビマット体験会』としても呼びかけ、通りかかった人たちにも歩いてもらいしました。

モビチェア

また今回、同じく「湘南バリアフリーツアーセンター」のサポートで使用できることになったのが、「モビチェア」!
驚きの、〝そのまま海に入れてしまう車椅子〟です。
「モビチェア」と、それを補助する人たちによって、場合によっては数十年ぶり、または初めて、参加者の皆さんは〝海水浴〟を楽しめることになりました。
その気持ちよさは、車椅子ユーザーだけでなく、体験乗車したたくさんの人も魅了!
海は「モビチェア」に乗ってプカプカと浮く人たちであふれました。

移動式バイオトイレカー

バリアフリーのイベントについてまわるのが、〝トイレ問題〟。
御幸の浜のトイレは海の家から遠く、通路の幅などから考えても、車椅子ユーザーの利用は難しそうでした。
そんな中、リハビリ関連のイベントで初鹿さんと交流のあった「優成サービス株式会社」の〝移動式バイオトイレカー〟が駆けつけてくれることに!
出入りは昇降式、バイオカーならではの〝臭いがしない〟という面も喜ばれて、ユーザー以外のたくさんの方も使用する、ありがたい存在となりました。

モルック

〝みんなで一緒に楽しめるアクティビティ〟として、今回話題に出たのが、最近TVなどでも話題の「モルック」!
数字の書かれた棒を並べ、投げた棒で倒していくという、シンプルなゲームです。
数本倒したらその本数を、1本だけの場合は棒に書かれている数をカウントしていき、先に50点になったチームが勝利。
ただし、50点を超えてしまうと25点からやり直し…などのルールもあり、予想以上に盛り上がます。
浜辺にはみんなの歓声が響きました。

待ちきれない!
入っちゃおう!
楽しんじゃおう!

いよいよ「ODAWARAバリアフリービーチ」のスタート!
浜辺には、ブルーのマットが、海に誘うカーペットのように敷かれました。

「モビマット」の脇には、「モビチェア」も「モルック」もスタンバイ。
もちろん、海の家の近くには「バイオトイレカー」も待機しています。

「モビマット」の上をやってくるみなさんの目の前に広がるのは、おそらく、久しぶりの夏の海!
記念写真も早々に、早速「モビチェア」に乗り換えて、続々と海の中へと向かっていきます。

共に海に入るのは、実行委員会メンバーの海班(陸班は受付や撮影などを担当)と、ボランティアのみなさん。
特にボランティアさんには海に詳しい人も多く、波や風、海のコンディションを気にかけながら補助、心強い助っ人となりました。

ユーザーのみなさんも、慣れてくると、持ってきた浮き輪で浮かんだり、砂浜に直接座ってのんびりしたりと、思い思いに楽しみはじめました。

「モビマット」上で会話を楽しむ高野さん(右)。

「率直に幸せな時間でした」(ユーザー・高野さん)

「8年ぶりに海に入った」という高野さん。
「率直に幸せな時間でした」
怪我をして歩けなくなって4年、今後、お子さんと一緒に海に入ることは無理と思っていたそうですが、
「『海って楽しいんだよ!』『お水しょっぱいでしょ!』って教えてあげることができました。
ひとつの夢が、たくさんのボランティア、企画関係者の方々のおかげで叶えられました」
息子さんと砂浜に直に座って楽しむ武藤さん(右)。

「〝一緒に楽しむ〟気持ちが伝わってくるイベントで、ホント最高でした!」(ユーザー・武藤さん)

もともと海水が苦手という武藤さんも、「こんな機会はなかなかない!」と一念発起。
「『できなくて仕方ない』『しょうがない』と納得させることに慣れてしまってましたが、サポートがあればできるんだ!って自信にもなりました。
私がプカプカ浮いてる時、波に逆らって引っ張ったり泳いだりしてくれる人がいる。ゲームをしていても、一緒に盛り上がれる。
〝する側〟〝される側〟だけでなく、〝一緒に楽しむ〟気持ちが伝わってくるイベントで、ホント最高でした!」

また、「モビマット」「モビチェア」の体験会も人気を博しました。
その場にいた人たちが、ユーザーもボランティアも通行人も関係なく、初めて、特殊なマットの上を歩き、未知なる〝海に浮かぶチェア〟に乗車。
そこにはバリアもボーダーもなく、あるのは、賑やかで楽しげな声とあふれる笑顔ばかりです。

「サポートくださる皆さんの声かけや配慮のおかげで、想像以上に楽しく海に入ることが出来ました!」(体験者・弘中さん)

体験者の1人・弘中さんも、見学の予定だったものの、みんなの海での楽しそうな様子に、思わず試乗!
ワンピースが濡れるのも意に介さず、初めての「モビチェア」を体感しました。
「座ったまま海に入ると聞いて、はじめは顔も水に浸かってしまうのではないかと不安な気持ちもありましたが、実際に体験してみると、サポートくださる皆さんの声かけや配慮のおかげで、想像以上に楽しく海に入ることが出来ました!こういう機会がもっと増えていくと素敵だなと思いました!」

「浮き輪よりずっと安心でした。予想より海に入る感覚を味わえました!」(体験者・南口さん)

海に入ったことがあまりなく、「最初はやはり怖かった」と話す南口さんも、サポートのみなさんの存在に安心したそうです。
「水に入って、浮力がすごく思ったよりも安定していて、助けてくれるみなさんが笑顔で横についていて、浮き輪よりずっと安心でした。
海に腰まで浸かれて、予想より海に入る感覚を味わえました!」

自然と出てきた「また来年!」の言葉。
けれど、まだまだ一歩目。

あっという間に終わった、第1回目の「ODAWARAバリアフリービーチ」。
みんなの口からは、自然と「また来年!」の言葉が出てきます。
楽しかった満喫感、楽しんでもらえた嬉しさ、やり遂げた感動、無事に終わった安心感。
けれど、まだまだ一歩目。
今回、一歩を踏み出したことで、より課題も、これからやりたいことも出てきました。
成功した!楽しかった!と思えるのは、色々な人のサポートや、運の良さがあってこそ、という意識は、実行委員会の誰もが持っています。
ただ、これで、二歩目、三歩目と、歩みを進めていくことができる。
たくさんの人に応援してもらい、目撃してもらい、体験してもらい、一緒に楽しんでもらった、最初のチャレンジとしての、「第1回 ODAWARAバリアフリービーチ」。
この輪を、2回目、3回目ではより広げていき、内容も改善しつつ、もっともっとパワーアップさせていく予定です。

 

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